理事会まち

ちょっとはなしが前後するのですが
精華大学理事会が団体交渉を拒否する直前におこなわれた
常務理事会で、きちんと嘱託教職員の状況について議論して、というビラをくばりました。


その理事会でゼロ回答と団体交渉拒否まで決まったので
まったくの徒労だったのだけど
クーラーのきいていない本館の5階で
理事会の開催を待っていたらだれかが廊下にクーラーをかけてくれたり
(事実はともかくこころのなかでは非正規のひとの連帯と勝手に解釈)
真意はともかく理事の全員がビラを受け取ったり
それはそれで楽しかった。


以下ビラ本文。SocoSocoビラにしてはずいぶんビラっぽい内容です。




理事会は精華の嘱託教職員の状況改善のための議論を!


はじめまして。 このビラは京都精華大学嘱託教職員組合SocoSocoから理事のみなさんにむけて書かれています。すっかり亜熱帯といった感じの暑い日々が続きますが、健やかに過ごされているでしょうか。 どれだけ報告がなされているかわからないので、まず現状報告を。

 
昨年末 から組合は上々手専務理事との間で何回か団体交渉を行ってきました。最初は日本語リテラシーチューターの雇い止め問題、最近はもっぱら精華の嘱託教職員全体の更新制限について議論をしています。ひとを育てる場所である大学が、そこで働くひとを育てない制度(解雇とセットの雇用)を維持するのは問題があるし、コストをかけた人材を放出し続けるのはあまりにももったいない、という問題意識から。


前回7月13日 の団体交渉では、大学側から「嘱託教職員が前を向いて働けるような雇用形態」(5月13日交渉時の確認事項)について理事会で検討した回答が出される予定でした。しかし結論は、現行の雇用形態を変えることはできないというもの。なにひとつ精華の非正規労働者についての調査が行われた形跡もなく(少なくともわたしの現場には一通のアンケートすらとどいていません)、統計や数字の上で雇い止め制度を維持する必要性が説明されるわけでもなく、すでに雇い止め制度に起因する問題がたくさん起こっている・これからも起こるという現場の主張をまったく無視するような決定がなされたことに、強い憤りと、これまでのいきさつ上 あんまり信頼はないにもかかわらず強烈な不信感を覚えました。そもそも5月の交渉で嘱託教職員の雇い止め制度には経営的にもメリットがないことは、大学側も納得していたはずなので 、雇い止め制度を設ける理由を再度上々手専務理事に質問しました。


●大学側の理屈(まとめるとこんな感じでした)
①更新年限がないと整理解雇をする際に、解雇対象を決めるのが困難になる。つまり、必要があれば年限を迎えたひとを整理解雇に代えて契約不更新にする。
②日本語リテラシー教育部門を含む共通教育センター全体の方針が決まっていないので、雇用契約だけを取り上げて検討したり変更したりすることはできない。


大学側というか、理事会のみなさんの承認を経た回答かと思われるので、別にとりたててあたらしいことではないかと思うのですが、その回答にどのような問題点があるのか簡単に解説しようと思います。おつきあいください。


まず理由① は整理解雇の四要件を逆手にとった屁理屈です。判例上、整理解雇をする場合に経営者は4つの要件を満たさなければなりません(詳しくはGoogleで検索を)。そのうちのひとつに「対象者の人選が合理的かどうか」というものがある。恣意的な選考はもちろんできないし、基準は公平でないといけない。話し合いのなかで何回か上々手専務理事が主張されていた「一緒に働いているひとたちのなかから、誰を解雇するかを選ぶのが難しい」というのはまっとうな感覚です。しかし、それを理由にして更新年限を設けることはおかしい。そもそも整理解雇は経営が困難な場合、最終手段として行うことです。先の四要件にも「解雇して人員整理する必要性が本当にあること」と「解雇を回避するためにできる限りの努力をする」というものがあります。初めから経営難に陥ったら、即整理解雇をするつもりでいるのがおかしいのです。

 
そして 整理解雇を避けられないような未来の経営難に備えて、更新年限付きの雇用を繰り返すことはいちじるしく不合理です。いつ来るかわからない以上、それがどれくらいの規模で経費の削減を必要とするのかはわかりません。その時に必要な削減目標と、その年に更新年限を迎える労働者にかかる人件費が同じになる保障もなく、ズレた場合は、結局解雇対象の選考をして整理解雇をしなければならない(わかるでしょうか?)。いつ来るかわからない「未来」の経営危機を前提に、すでにいる・育ててきた人材を次々に「輩出」しつづけているのは、あまりにももったいない。
 

ついでにいうと 更新年限がないと選考が難しいというのは嘘です。なぜなら、やっぱり有期雇用のものから先に職場から引き離されるから。「人間を尊重することを建学の理念する」はずだった精華大学のなかにも、すでに正規と非正規の教職員がいる。その差のひとつは優先的に人減らしの対象になることです。いま、理事のみなさんが下した暫定的な決定を裏付けているのは、非正規や有期雇用の労働者のなかでさらに解雇の選考基準を設ける必要があるという理屈です。整理解雇するときに誰をすればいいか決められない、という不安は、拡大しつづければ全ての被雇用者に整理券でも配らない限り解消されません。しかし、解雇の優先順位をどこまでも細分化していく過程で、非正規労働者から順位をつけていくことを差別ではないといえるのでしょうか。働くひとを序列化するような制度を正当化するような大学に、どんな教育ができるというのでしょうか。
 

②については あまりにも驚くべき回答だったので(なにしろセンター発足から1年以上が過ぎているので)組合としてはいまいちいうことが思いつきませんが、はやいところ方針を決めたらよいのではないでしょうか。いうまでもなく、嘱託教職員は共通教育センター所属だけではなくほかにもたくさんいるので(その共通教育センターのなかでも一律3年でくびという契約ではないし)、方針が決まっていないらしいセンターはひとまずおいて、まずはセンターと関係のない部署の嘱託の雇用形態からちゃんと検討をはじめるべきなのでは。


では 窓もない部屋での長時間の議論は気持ちにもよくないかと思いますが、つぎつぎに同僚がいなくなる職場(☆1)で未来なく働き続けるものやはり気持ちにはよくないので、はやいとこ「嘱託教職員が前を向いて働けるような雇用形態」について真に議論されることを願っています。こころから。


京都精華大学嘱託教職員組合SocoSoco  2010年7月26日



☆1 わたしが働き始めてから雇い止めで2名が、それぞれの事情で5名がすでにこの部署から辞めている。つまり職場の風景はわずか3年足らずのあいだにまったく違ったものになっているわけです。辞めざるを得なかったひと、辞めることを選択したひとの顔を思い浮かべるとき、「未来」がない場所で働くという、わたし(たち)の世代に不当に押し付けられている労働状況の困難を思うのと同時に、どうして一回生の教育という大事なところに関わっていながら、精華の未来を思い描くことから徹底して排除され続けているのだろうと憤りを感じる。