回答書全文+見どころ

しばらく更新できずにいました。
回答書を入力してみて、なんだ、みにくいものを見たくなくて手が止まっていたのかとみょうに納得。
新自由主義的な経営観・人間観むきだしの精華理念放棄宣言ともいえる文書ですが、現実はここにしかないと
半年間組合活動を続けてわかっただけまだましかも。
ここからはじめるってことだね。
ヘッドレターは省略。以下回答書。見やすくするために改行はふやしました。

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学校法人京都精華大学
理事長 赤坂 博


回 答 書


2010年7月13日に京都精華大学嘱託教職員組合SocoSocoと学校法人京都精華大学が行った団体交渉終了時に取り交わした「確認書」に基づき、次の通り回答します。

1.本回答の趣旨

「本学の嘱託教職員が前を向いて働けるような雇用形態」を検討した結果について、これまでの団体交渉における議論を踏まえるように努めて回答するものです。


2.交渉の経過                  

 2009年12月22日(火) 第1回団体交渉
 ・団体交渉において「日本語リテラシー嘱託助手の3年雇い止め廃止を求める要望書」を受け取った。           

2010年1月26日(火) 第2回団体交渉        
 ・前記要望書に対する回答書を手渡した。  
 ・2010年度日本語リテラシー教育部門嘱託助手の募集に対し、2009年度任期切れを迎える同部門嘱託助手が再応募する権利を認め、その旨を記載した「確認書」を交わした。

 2010年5月13日(木) 第3回団体交渉
 ・京都精華大学で働く嘱託教職員が前を向いて働けるような雇用形態を検討し、それを次回団体交渉までに理事会は案 としてSocoSocoに対して報告を行うことを確認した。

 2010年7月13日(火) 第4回団体交渉
 ・冒頭ならびに「1.本回答の趣旨」に記載の通り、文書回答することを確認した。

 2010年7月27日(火) 第5回団体交渉(開催予定)      


3.回答主文

 現在の嘱託助手雇用制度において、契約期間1年以内、2回まで更新可能としている制度は、当面維持するものとします。
 その理由は、以下の通りです。

(1)共通教育の改革
2010年1月26日付けの回答書にも述べた通り、共通教育センターでの教育体制については、固定的なビジョンを持つべきではなく、今後も工夫と試行により最も適した体制を作って行かなければならないと考えています。さらに、2010年度の入学者の確保状況を見た時、これまでにも増して厳しい状況が見えています。本学が高等教育に対する社会のニーズに充分対応できるよう、早急に教学改革を行っていくことの必要性を常務理事会はさらに強く意識しています。

 特に人文学部の教学改革は緊急の課題です。専門教育と基礎教育の双方において、学部全体を通しての改革の必要があります。他学部における改革も視野に入れれば、なおさら共通教育センターの教育体制が現在のまま変わらないとは、想定できません。
 
 日本語リテラシー・導入教育の対象学生は人文学部生です。これらの部門を共通教育センターから学部に編入することも今後検討すべき課題です。貴組合との意見交換において、人文学部での教育課程と各部門の教育課程の連携・接続を改善する必要性も論じられたところです。                        
 
 こうした改革を実施する時、組織の変更だけではなく、当然ながら教育方法や教育体制(クラス編成や助手の配置など)も見直すべきでしょう。改革実施案が成立するまでには、残念ながら多少の時間を要します。改革実施案の内容が見通せない現状では、人的体制について具体的な検討ができません。そのことを先行して決めることはできないと考えています。   
 
 現在の嘱託助手の雇用期間の見直しができないことの理由の一つは、以上の状況認識にあります。        

(2)通算契約期間が3年以内であることの弊害の検討
 貴組合と団体交渉を重ねるうちに、常務理事会は、チューターの方々が誠意をもって学生の教育に携わっていただいており、契約更改を重ねるに従ってスキルアップされ、学生からも信頼を得ておられる状況をお聞きすることができました。その状況下で、3年を超える雇用契約をしないことは、教育力の損失であると言える面があるかも知れません。しかし、人的教育体制を固められない現状では、大学はその損失を受容しなければならないと判断しています。
 
 また、契約更改回数を増やし、通算契約期間の上限を延長することも団体交渉の中では検討案として出されていました。「3年を超える契約がない中では、担当した学生が卒業論文を書き上げるのを見届けることもできない」とのご意見もいただきました。熱意をもって学生の教育に当っていただいており大変有難いご意見ではありますが、現在のチューターの方々にお願いしているのは、本来1年生までの教育です。
 
 団体交渉の中で、「更改回数上限を撤廃しても、1年契約であるからには雇い止めは可能であり、人事制度としては大学側においても問題がないのではないか」という貴組合のご意見がありました。これは一見可能なように見えますが、実際に雇い止めを実施する場面では、相当の合理性を説明しなければならないと考えています。誠意をもって働いていただいている方々のうち、ある特定の方を雇い止めにする相当な合理性について、一般的に説明責任を果たし切ることは難しいでしょう。そこには、公平性の確保の視点が相当程度必要になります。従って、そういったことを実施することを前提に雇用制度を作るべきではありません。こうしたことから、一律に更改回数の上限を設定し、それを明示して雇用契約を結ぶ現在の制度を維持すべきであると考えています。

 勿論、現在の制度においても1年契約であり、その更改時に契約を打ち切ることはあり得ますが、そこに合理的理由が存在する場合にのみ契約を打ち切ることを前提として運用しているものです。
  

(3)個人のキャリア形成における助手の教歴の問題の検討
 常務理事会は、嘱託助手が職員ではなく教員と位置付けられていることによって、嘱託助手のキャリアが本人の将来にとって幾分でも有利に作用するであろうという認識を持っていました。しかし、研究業績がある程度あり教員を継続して行くことが可能な人にとってはチューターの教歴も幾分プラスになるが、そうでない場合は、次なる職種によってはチューターの教歴が必ずしも評価されないという現実について、団体交渉を通して常務理事会は理解を深めました。
 
 もとより、個人のキャリア形成は自己責任であるべきでしょうが、共通教育センターの助手の応募資格を学部卒以上としている点については、検討課題であると認識しています。今後、検討・調整します。


(4)嘱託教職員が前を向いて働けるような雇用形態の検討結果
 3年以上の雇用継続を可能とする制度に移行することは予定しません。共通教育センターについては、既述の通りですが、それ以外の嘱託教職員についても、現行の雇用期間上限の延長は、予定していません。
 
 もとより、嘱託教職員の方々には専任と同等の業務内容や義務を求めるものではなく、限定された分野での能力の活用を期待しているものです。それにともなって権利と責任も異なっています。雇用継続期間も、それぞれの就業規則に定められた期間が上限となります。そうした中で、必ずしも嘱託教職員全員が前を向いて働いていただいていないとは認識しておらず、積極的に働いていただいている方々も多数おられることと思います。また、次のキャリアに向けてスキルアップしようと努力されている方々も多数おられることでしょう。助手の公募に際しては、2010年1月26日に確認した通り、再応募が可能です。ただし、現状で充分と考えるのではなく、より一層働き甲斐のある職場環境を整備することによって、大学全体の教職員の力を発揮し、本学の存在意義を高めて行けるようにしなければならないと考えています。働き甲斐のある職場環境作りの方法・手段は、何も雇用期間の延長だけであるとは限りません。

 かつて本学は、教員(非常勤講師を除く)・事務職員・用務職員・寮母が全て専任で同一給与体系でした。そして教職員が等しく大学の将来に責任を持とうと考えて運営していました。その時代に戻ることは不可能です。その時代は、他大学においても専任での雇用形態が主流を占めており、例えば今では見られなくなった電話交換手という職種の方も、多くの大学で専任職員としての雇用でした。
 
 現在、ほとんどの私立大学が特任教員、嘱託教職員、派遣職員といった形態の教職員を多数雇用し、できるだけ安い授業料でできるだけ質の高い特色ある教育を実施しようと競合しています。さらに、国立大学は私立大学とはおよそ不平等な環境に安置されていますが、それでも教職員の待遇に関しては相互に連関しています。   
 
 このような日本の高等教育の現状にあって、本学だけがかつて理想とした教職員の雇用状況に戻ることはできません。戻ることは、ほぼ大学の廃止を意味するでしょう。さらに、当時に比べて多様な人材と設備が必要になっています。
 
 嘱託教職員の方々が限られた期間の中ではあっても働き甲斐をもって働いていただき、本学でのキャリアが次のキャリアに生かせるようスキルアップしていただけるよう、今後も継続して職場の改善に取り組みたいと思います。


4.関連する意見
(1)契約の履行                        
 嘱託助手の方々と学校法人は雇用契約書に労使双方が署名捺印することによって生じた雇用関係にあります。成立した契約を履行することは契約者双方の義務であることは当然であり疑問の余地を残しません。現在、嘱託助手の方々と成立している契約書には、契約更改回数の上限が明記され、最終年度の契約においてはそれ以上の契約更改をしないことが明記されています。繰り返しになりますが、その契約書に貴組合の嘱託助手の方々も署名捺印されているからこそ、現在の雇用関係が存在します。
 
 被雇用者が労働条件の改善を要求する権利は、既に成立している契約についてもあることは理解しています。しかし、現在の契約は成立し存在しているわけですから、この契約についての認識をもう少し示していただくべきだと思います。  

(2)悠々館前広場の不法占拠
 現在、悠々館前の広場に、貴組合の「活動拠点」である小屋が建てられており、主として学生の交流や作品発表のための場所として大学が整備した空間を不法に占拠しています。いかに労働運動のためであろうと、本学に教員として勤務する者が、学生のために整備された空間を不法に占拠する行為は、許されるべきものではありません。大学は7月13日の団体交渉の場において7月31日から8月8日までの期間について撤去を要請しました。もとより、空間を占拠する権利はあなた方にはなく、恒久的に撤去すべきです。従って、7月30日までの期間にできるだけ速やかに解体撤去し、全ての部材を大学構外に搬出するとともに、8月9日以降についても再び占拠することのないよう、ここに改めて強く要請します。これまで、学生の一時撤去要請には応じているようですが、学生が要請しなければ学生のための空間を占拠し続けるという行為は、「教職員」組合のとるべき行為でしょうか。教職員の行動としての適切性を自省されるべきです。


以上

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四行で要約するなら

雇い止め制度は維持する。その理由は、入学者確保がおぼつかなく共通教育センターの方針も決まっておらず、一律でくびにする方式をとっていないと雇用調整がしにくいから。嘱託教職員全部があんたら組合みたいに文句いってるわけじゃなくて、それぞれの目標にむかって努力しとるからそれでよい。精華の理念は昔のはなし、いまはそんなふうにいってたら大学つぶれます。3年上限の契約書にサインしたんだからあんまり文句はいうべきでない。ついでに小屋も撤去してね。


ほぼそんな感じじゃないでしょうか。

見どころはいま書けるところだけあげると

①「もとより、嘱託教職員の方々には専任と同等の業務内容や義務を求めるものではなく、限定された分野での能力の活用を期待しているものです。それにともなって権利と賃金も異なっています。雇用継続期間も、それぞれの就業規則に定められた期間が上限となります。そうした中で、必ずしも嘱託教職員全員が前を向いて働いていただいていないとは認識しておらず、積極的に働いていただいている方々も多数おられることと思います。また、次のキャリアに向けてスキルアップしようと努力されている方々も多数おられることでしょう」

②「かつて本学は、教員(非常勤講師を除く)・事務職員・用務職員・寮母が全て専任で同一給与体系でした。そして教職員が等しく大学の将来に責任を持とうと考えて運営していました。その時代に戻ることは不可能です」

③「現在、ほとんどの私立大学が特任教員、嘱託教職員、派遣職員といった形態の教職員を多数雇用し、できるだけ安い授業料でできるだけ質の高い特色ある教育を実施しようと競合しています」

④「このような日本の高等教育の現状にあって、本学だけがかつて理想とした教職員の雇用状況に戻ることはできません。戻ることは、ほぼ大学の廃止を意味するでしょう」


①についていうと嘱託教職員には「専任と同等の業務内容や義務を求めるものではなく、限定された分野での能力の活用を期待している」という部分がちょっと理解できない。たとえば日本語リテラシー教育部門にはひとりの専任もいないが、そういった嘱託だけで運営されている部署においても、限定された分野での能力の活用が期待されているなんていえるのだろうか。それとも実は専任がまぎれこんでいる? あと各部署に嘱託職員のひとたちがいるけど、専任のひとと「同等」ではない、限定された業務をおもにおこなっているのだろうか(これはきいてみたい)。たとえば精華のなかでも人材のアウトソーシングを積極的にすすめた情報館において、藤岡次長は「実際には嘱託だけでまわっているところがある」ってニュアンスのことを自信満々にどっかのインタビューで答えていたけれど、それって専任がやるはずのしごとを安く下請けに出したってことじゃないのかな。つまりこの回答にはおそろしい嘘がある。専任と同じ・もしくは同じようなしごとを、権利も賃金も少ない嘱託をつかってやらせていて、そういった差別を、限定されたとか、補助的な(今回はそういう言葉は使ってないですが)って言葉でごまかしている。

②については「その時代にもどることは不可能です」と書いてるが、組合は一度もその時代に戻れなんていっていない。「人間を尊重する」っていう理念と現行制度のすりあわせをどんなふうにするのかきいたことはあるので、それに対してここまでむねをはって無理っていわれてもって感じ。1月の回答書でも更新上限撤廃に「専任化には応じられない」ってすりかえ回答をしていたけど(なにしろ1年契約はとりあえず問題にしていないので)、ここでもまた論点をすりかえて、組合の要求がむちゃいってる、って印象操作をしている。

③「できるだけ安い授業料でできるだけ質の高い特色ある教育」って箇所が、「できるだけ安い人件費でできるだけよさそうな見せかけの教育」のまちがいでしょ、と思った。しかしそんなことできるんでしょうかね。

④これも②と同じヒラキナオリ。極論。くれぐれもいっときますが、組合がずっと要求しているのは、1年契約で雇われている嘱託教職員の「更新は2回を限度とする」という条文の削除のみ。大学の廃止も、すべての教職員の専任化も、専任の給与の歩合給制度への移行(これは理事会が21世紀初頭に試みて頓挫)も要求しておりません。


さて、残りはほかの組合のひとにバトンタッチ。ひとそれぞれ視点はちがうだろうから。